鳴子こけし

あどけなく、純粋な子どもの心を思わせるように微笑むこけし。こけしには雪深い東北の厳しい風土に生きる人々の喜びや悲しみが深く息づいているようです。

鳴子温泉地域でこけしが作られるようになったのは、いつ頃からかは明らかではありませんが、文献や伝承によると江戸時代末期と推定されています。鳴子こけしの伝統は、親から子、師から弟子へと従弟制度の厳しさの中で伝えられ、それぞれの特徴が受け継がれています。

大きな頭、中程がやや細くなった安定感のある胴と菊の模様は、鳴子こけしの大きな特徴として親しまれています。首を胴に差し込んだ「はめ込み式」の構造で首を回すと「キュッキュッ」と音が出ることでも知られています。

鳴子こけしの愛らしさに秘めた職人技

「こけしの首の部分は胴体に開いた穴よりも大きいんです。ロクロを回しながら、摩擦を利用して一気にはめ込む。『キュッキュッ』と鳴る鳴子こけしの特徴は、この首入れの技術があってのものです」伝統工芸士・菅原和平さん画像

200年間、変わらぬ手法と姿を受け継ぐ鳴子伝統こけしの第一人者・菅原和平さんがそう言いながら実演してみせてくれます。素材となる「みずき」を秋口から伐採し、1年間寝かせて乾燥。ロクロを回しながら削り、描彩、ろう仕上げまで、まったく気を抜けない作業の連続です。

「鳴子こけしのやさしい顔立ちは、肌が白くて、キメの細かいこのみずきを使うからかもしれないですね。特に私の系統のこけしは、少し面長。買われたかたに、子どもやお孫さんを見るような気持ちで大事にしてもらえるように、と思っているんです。だから、顔のいのちである眼を描くときには、いまだに緊張します。息をとめて、集中して描いています」

20歳のころから40年間、こけし一筋に歩んできた菅原さんが、一体一体心をこめて作っているこけしたち。かわいらしい姿に秘められた技と心が、全国のファンに長く愛される理由なのです。

伝統こけしの特徴

伝統こけしの特徴
系統 主産地 特徴
鳴子系 宮城県大崎市鳴子温泉 胴が太く、頭との調和がよく安定感があります。菊を中心とする華やかな胴模様で頭は特殊なはめ込み方式で回すとキイキイと鳴るのが特徴です。
津軽系 青森県黒石市 ねぶた絵やアイヌ模様をとり入れ、郷土色が出ています。
木地山系 秋田県木地山 前垂模様、菊花模様、着物模様などがあります。
南部(花巻系) 岩手県花巻市 無彩、描彩があり、形におもしろさがあります。
肘折系 山形県肘折 鳴子、遠刈田系などから分かれ、開拓されました。
山形・作並系 山形県山形市・宮城県仙台市作並  頭に比べ、胴がきわめて細いのが特徴です。
弥治郎系 宮城県白石市弥治郎 頭が大きく、ベレー帽風のろくろ模様が入っています。胴もろくろ模様があり、色あざやかです。
蔵王系 山形蔵王 遠刈田系から分かれたものです。頭に赤い放射状の飾りのあるおかっぱ頭が多く、量感があります。
遠刈田系 宮城県遠刈田 菊など八重の華麗な胴模様で頭の割に胴が細くなっています。
土湯系 福島県土湯 頭の墨の蛇の目模様、胴は、簡素なろくろ模様のものが多くなっています。

こけし絵付け体験

鳴子こけし販売店(一部)や日本こけし館では、こけしの絵付けを体験できます。
旅の記念に世界にひとつのMYこけしはいかがですか?

●絵付け体験料金(日本こけし館)
1人~19人:1,080円、20人以上980円

こけしの歴史

テロップ:こけしの歴史

こけしは、江戸時代(1804~1830年)文化文政のころ、お椀やお盆を挽く木地師たちが子どものために玩具として作り、与えたのが始まりとされています。

幕末の記録(1862年)によると、「こふけし(こうけし)」と記されており、「子受けし」子どもが授かるというお祝いの意味があると思われ、また、こけしの頭に描かれている模様「水引手」は京都の「御所人形」において特にお祝い人形のために創案された描彩様式であることから、こけしは子どもの健康な成長を願うお祝い人形であると思われます。

東北各地に伝わる「こけし」は、地方によって「こげす」「こうげし」「こげすんぼこ」「きぼこ」「でこ」「でく」などさまざまな呼び名がありましたが、こけしの話をしたり、こけしの注文をする際など、意味が通じないことがあったため、昭和15年東京こけし会(現 東京こけし友の会)総会で「こけし」とひらがな三文字に統一されました。

こけしは東北各地の木地師によって伝承され、現在では、肘折系(山形県肘折)、津軽系(青森県黒石市)、山形系(山形県山形市)、南部系(岩手県花巻市)、木地山系(秋田県木地山)、鳴子系(宮城県鳴子温泉)、土湯系(福島県土湯)、蔵王系(山形県蔵王)、作並系(宮城県作並)、弥治郎系(宮城県白石市)の11系統に分けられ、その独特な表情に東北人の人間 性そのものが表れているといえます。

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