○大崎市中小企業及び小規模企業振興基本条例

平成31年3月7日

条例第3号

恵の森奥羽山脈の山々がそびえ,荒雄岳を源とする江合川と船形連峰を源とする鳴瀬川の2つの大きな河川が市域を貫流し,その支流に沿って県内有数の肥沃で広大な平野「大崎耕土」が広がり,先人が綿々と築いてきたこの大崎耕土が,平成29年に「世界農業遺産」の認定を受け,生きた遺産として本市の歴史に刻まれた。

このように,先人が築き上げてきた本市は,銘柄米「ササニシキ・ひとめぼれ」の発祥の地で,稲作中心の農業を基幹としながら,東北縦貫自動車道古川インターチェンジや東北新幹線古川駅などの交通・物流の利点を生かした工業や市内中心部などに展開する商業,鳴子温泉郷を代表とする観光業が発展し,県北西部の拠点都市として,政治,経済,観光,文化の中心的役割を担ってきた。

本市における経済の発展を根幹から支える大きな役割を担ってきたのが,市内企業の大部分を占める中小企業及び小規模企業であり,自らが「おおさきの未来を明るくしたい」という気概を持ち,「地域力の向上」を目指した内発型産業の創出を目標に,産業の垣根を越え,企業間あるいは産学官の連携による新事業創出や販路の開拓,更には官民一体での人材育成支援の展開など,特徴ある取組を進めてきた。

また,本市に甚大な被害をもたらした東日本大震災,平成27年9月関東・東北豪雨災害においては,中小企業及び小規模企業が,本市の復旧・復興のけん引力となり,市民生活の再建に対し大きな役割を担ってきた。

本市が,将来にわたり持続的に発展しながら,市民一人ひとりが安心して豊かに住み続けるためには,働く人の収入が増え,消費が拡大し,雇用が創出されていくなどの良好な経済循環の形成が必要であり,そのためには,このような官民協働の動きを活発化させるとともに,中小企業及び小規模企業が自主的な努力及び創意工夫を基本としながら,大企業,市民,関係団体,そして市が,中小企業及び小規模企業の果たす役割の重要性を理解し,本市の中小企業及び小規模企業の振興に取り組むことが重要である。

ここに,中小企業及び小規模企業の振興を,本市の重要な柱として位置づけ,地域社会一丸となり振興に取り組むため,この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は,中小企業及び小規模企業が本市における経済の発展に果たす役割の重要性に鑑み,その振興に関し基本理念を定め,市の責務等を明らかにするとともに,中小企業及び小規模企業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより,中小企業及び小規模企業の成長発展を図り,もって市民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。

(1) 中小企業 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に規定する中小企業者であって,市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 小規模企業 中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模企業者であって,市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(3) 商工会議所 商工会議所法(昭和28年法律第143号)に基づき設立された法人であって,市内に事務所を有するものをいう。

(4) 商工会 商工会法(昭和35年法律第89号)に基づき設立された法人であって,市内に事務所を有するものをいう。

(5) 大企業 中小企業及び小規模企業以外の会社であって,市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(6) 金融機関等 銀行,信用金庫,信用組合,協同組合その他の金融業を行うもの及び信用保証協会であって,市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(7) 学校 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校のうち小学校,中学校,義務教育学校,高等学校及び中等教育学校であって,市内に存するものをいう。

(基本理念)

第3条 中小企業及び小規模企業の振興は,中小企業及び小規模企業の自主的な努力及び創意工夫による取組を支援することを基本として,推進されなければならない。

2 中小企業及び小規模企業の振興は,多様な才能を持った人材,四季折々を彩る美しい自然,優れた技術,伝統,文化その他の地域資源の積極的な活用を図ることにより推進されなければならない。

3 中小企業及び小規模企業の振興は,全ての市民が安心して働き,活躍する社会の形成を図ることにより推進されなければならない。

(市の責務)

第4条 市は,基本理念にのっとり,中小企業及び小規模企業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

2 市は,中小企業及び小規模企業の振興に関する施策を実現するため,必要な財政措置を講ずるものとする。

(中小企業及び小規模企業の取組)

第5条 中小企業及び小規模企業は,基本理念にのっとり,経済及び社会がもたらす環境の変化に対応し,その事業の成長発展及び市内の経済循環型社会の形成を図るため,自主的な努力及び創意工夫により経営の改善及び向上を図るものとする。

2 中小企業及び小規模企業は,基本理念にのっとり,地域社会を構成する一員として,地域社会との調和を図り,安心して暮らしやすい地域社会の実現に貢献するものとする。

3 中小企業及び小規模企業は,基本理念にのっとり,誰もが意欲的に働き続けることができる環境整備等,地域における雇用機会の創出に努めるとともに,その事業活動を通じて地域の振興に資するように努めるものとする。

4 中小企業及び小規模企業は,基本理念にのっとり,学校の実施する職場見学,職場体験活動その他の職業に関する理解を深める学習等に協力するものとする。

(商工会議所及び商工会の役割)

第6条 商工会議所及び商工会は,基本理念にのっとり,中小企業及び小規模企業の経営の向上及び改善に積極的に取り組むとともに,市が行う中小企業及び小規模企業の振興に関する施策の実施について協力するものとする。

(金融機関の役割)

第7条 金融機関は,基本理念にのっとり,中小企業及び小規模企業の経営支援又は資金需要に対する適切な対応等により,中小企業及び小規模企業の経営の改善及び向上に配慮するとともに,市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するものとする。

(大企業の役割)

第8条 大企業は,基本理念にのっとり,地域の活性化に資するよう努めるとともに,市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するものとする。

2 大企業は,基本理念にのっとり,地域社会を構成する一員としての社会的責任及び影響を自覚することはもとより,中小企業及び小規模企業が自らの事業活動の維持及び発展に欠くことのできない重要な存在であることを認識し,中小企業及び小規模企業並びに関係団体等と連携及び協力するものとする。

(学校の役割)

第9条 学校は,基本理念にのっとり,職場見学,職場体験活動その他の職業に関する理解を深める学習等を通して,職業に係る意識の啓発を図るとともに,地域の次世代を担う人材育成に努めるものとする。

(市民の理解及び協力)

第10条 市民は,中小企業及び小規模企業が活力ある地域社会及び豊かな市民生活の実現のために重要な役割を担っていることを理解し,市が実施する中小企業及び小規模企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(基本施策)

第11条 市は,中小企業及び小規模企業の振興に関して,関係団体と連携及び協力の下,官民一体となって,次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 経営の安定及び経営基盤の整備を推進するための施策

(2) 国内外における販路の開拓を推進するための施策

(3) 新技術及び新商品の開発等を推進するための施策

(4) 地域資源の活用を推進するための施策

(5) 創業,事業の承継及び企業の連携を推進するための施策

(6) 人材育成及び雇用の安定を推進するための施策

(7) 資金調達の円滑化を推進するための施策

(8) 中小企業及び小規模企業に関する情報の収集及び提供を推進するための施策

(9) 前各号に掲げるもののほか,市長が必要と認める施策

(小規模企業への配慮)

第12条 市は,前条に掲げる施策の推進に当たり,経営資源の確保が困難である小規模企業に対して特に配慮するものとし,小規模企業の事業の持続的発展を図るため,経営に関する支援体制の整備の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

(委任)

第13条 この条例の施行に関し必要な事項は,市長が別に定める。

(施行期日)

1 この条例は,平成31年4月1日から施行する。

(大崎市中小企業振興条例の廃止)

2 大崎市中小企業振興条例(平成18年大崎市条例第221号)は,廃止する。

大崎市中小企業及び小規模企業振興基本条例

平成31年3月7日 条例第3号

(平成31年4月1日施行)